エボラ出血熱の検査で男女2人とも陰性
【2014年11月7日】
西アフリカで流行しているエボラ出血熱について、厚生労働省は11月4日にリベリアから帰国した60代の男性と[1]、関西空港に11月7日に到着したギニア国籍の20代女性が、いずれも発熱などの症状を訴えていたため[2]、11月8日に「国立感染症研究所」により、「60代男性」と「ギニア国籍の20代女性」の2人に対して[3]、エボラ出血熱の遺伝子検査(PCR検査)を実施したところ[4][5]、「ウイルス陰性」の結果が得られ[6]、厚生労働省は「陰性」だと発表した[4]。今回の2つのケースで対応に追われていた関係機関の間には安堵感が広がっている[7]。
東京の医療機関で受診したケース
男性は、ビジネス目的でリベリアに約1ヶ月の間滞在した後[2]、ヨーロッパを経由して11月4日に羽田空港に到着した[8]が、帰国時に発熱があった他は自覚症状はなく[9]、検疫所において毎日2度にわたって検温などによる健康監視が行われていた[10]。
11月7日午前に、男性は発熱や喉の痛みなどの「自覚症状」が発生した為、午前10時ごろ、町田市内の診療所を受診したところ、38・9度の発熱が確認される[9]。しかし、受診するときに時にリベリアへ渡航した事は医者へ明かさなかった[8]。この時点で医師は患者である男性ののどが腫れていたため、「へんとう腺炎」と診断し、そのうえで、薬を処方して男性をそのまま帰宅させた[8]。
ところが、11月7日午前11時ごろに、60代男性から検疫所あてに、「38.9度の熱があったため医療機関を受診した」旨の連絡が、メールにより伝えられ[8]、7日午後に、町田市内の診療所に対して、羽田空港の検疫所から「受診男性の名前とリベリアへの渡航歴があった」という連絡があり、さらに、地元の保健所から指示があるまでは診療所は休診しておくよう、検疫所から要請された[11]。そこで、厚生労働省では60代男性に対し、電話で受診の経緯について確認を取ろうとするも電話に出なかったため、東京都の保健所の職員が60歳男性の自宅へ直接出向き、受診の経緯について確認を取り[12]、厚生労働省では、この男性を国立国際医療研究センターに搬送し、「感染症法」に基づき、入院措置として、診断させたところ[8]、「細菌感染によるへんとう腺炎(咽頭炎)」と診断された[13]。その後、エボラ熱感染の疑いがあるため[11]、エボラ出血熱の検査を実施したところ、11月8日に陰性だったと発表した[4][13]。11月8日午後、容態の無事が確認されたため、「国立国際医療研究センター」から退院した[14][15]。
男性を診察した医師はフジテレビの取材に対して「アフリカ、当該地域に渡航歴のある方なんですがという話で、いきなり電話がきて。え、そうなんですかという話です。本人は言わないから、わからないです」と、検疫所から連絡があった当時の様子を語っている[16]。また、今回、この男性に対して、医師が滞在歴を確認していなかったのかについて、厚生労働省は毎日新聞の取材に対して「今後医師の話を聞かないとわからない」としている[17]。
さらに、60代男性が帰国した際に、空港の検疫官から発熱があった際は直ちに検疫所か保健所に連絡することや、自分の判断で医療機関を受診しないよう、口頭で説明されていた[17]。また、この男性は検疫法に基づく、「健康監視」の対象となっており、潜伏期間の21日間にわたって、朝晩2回の体温や体調に変化がないかについて、検疫所に対し電話やメールで報告する必要があったため[12]、この60代男性は、健康監視で定められていた検疫所への体調報告は続けていた[8]。
フジテレビの取材に対して、感染症の専門家である東京大学医科学研究所の岩本愛吉教授は、今回の男性の行動について、「実際にはこの方が取られた行動っていうのは、医療機関にいても、逆に問題になったでしょうし、ご自宅に帰ったとき、その間、どういうふうにしてほしいのか、議論が必要だと思いますね」と語っている[18]。
大阪のケース
11月7日夕方に西アフリカのギニアからドバイを経由して関西国際空港に到着した、20代のギニア国籍の女性に発熱の症状が確認された[19]。この女性は7日の16時49分に関西国際空港に到着した後、流行している国に滞在していることがある乗客に対し、申告を求める検疫所の呼びかけに、ギニアからの渡航であることを伝えていた[20][21]。
これを受け、厚生労働省は11月7日をもって、「まだ感染は確認されておらず、検査の結果、陰性となることも十分にあり得る。飛行機に同乗しただけでは感染しない」という国民の皆様へのメッセージを公表していた[22]。
厚生労働省は、7日21時頃、大阪泉佐野市にある「りんくう総合医療センター」に搬送[20]。搬送先で行った簡易診断で、熱帯熱マラリアと診断された[20]。その後、女性から採取された血液を国立感染症研究所に送り[19][20]、8日6時50分ごろ、国立感染症研究所に到着[21]し、エボラ出血熱の検査を実施したところ、11月8日に陰性であることがわかった[5][6]。11月9日晩に、容態の無事が確認されたため、「りんくう総合医療センター」から退院した[23]。
女性が乗っていたエミレーツ航空316便には、乗客・乗員237人が乗っており、厚生労働省では航空会社から乗客名簿の提供を受けて、もし、女性がエボラ出血熱に感染していた場合、乗客などの健康状態を確認するとしている[19]。また、この便に乗っていた乗客からの相談を受け付ける、専用の電話番号を設けていた[20]が、11月10日に、設置されていた専用電話の受付が終了した[23]。
情報源
- ↑ 『【エボラ出血熱】都内の60代男性、発熱で検査へ リベリアから帰国』 — 産経新聞, 2014年11月7日
- ↑ 2.0 2.1 『リベリア滞在男性発熱、関空ではギニア女性 エボラ検査』 — 日本経済新聞, 2014年11月8日
- ↑ 桐野耕一 『エボラ出血熱:関空のギニア女性は陰性』 — 毎日新聞, 2014年11月8日
- ↑ 4.0 4.1 4.2 『エボラ出血熱疑い患者の検査結果(陰性)について』 — 厚生労働省, 2014年11月8日
- ↑ 5.0 5.1 『エボラ出血熱への感染があり得るとされた患者の検査結果(陰性)について』 — 厚生労働省, 2014年11月8日
- ↑ 6.0 6.1 『エボラ感染疑いのギニア人女性、ウイルス検出されず』 — 日本経済新聞, 2014年11月8日
- ↑ 山田毅、新宮達、藤顕一郎、吉田卓矢 『エボラ出血熱:ギニア人女性もシロ 関係機関に安堵広がる』 — 毎日新聞, 2014年11月8日
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 桐野耕一、金秀蓮 『エボラ熱:疑い2例目 60代男性、発熱訴え一般病院受診』 — 毎日新聞, 2014年11月7日
- ↑ 9.0 9.1 『【エボラ出血熱】疑いの60代男性、医療機関の診断名は「扁桃腺炎」 リベリア滞在は数週間』 — 産経新聞, 2014年11月7日
- ↑ 『エボラ出血熱への感染があり得る患者の発生について』 — 厚生労働省, 2014年11月7日
- ↑ 11.0 11.1 『リベリア滞在歴ある男性発熱で念のために検査』 — 日本放送協会, 2014年11月8日
- ↑ 12.0 12.1 『【エボラ出血熱】検疫所連絡前に診療所受診 疑いある男性、「健康監視」の対象者だった』 — 産経新聞, 2014年11月7日
- ↑ 13.0 13.1 『【エボラ出血熱】都内の60代男性は陰性 リベリア渡航で発熱訴え』 — 産経新聞, 2014年11月8日
- ↑ 『【エボラ出血熱】東京の60代男性が退院』 — 産経新聞, 2014年11月8日
- ↑ 『エボラ出血熱への感染があり得るとされた患者の退院について』 — 厚生労働省, 2014年11月8日
- ↑ 『60代男性診察の医師が様子語る 午前に診察に来た際、39度の熱』 — フジテレビジョン, 2014年11月7日
- ↑ 17.0 17.1 金秀蓮 『エボラ熱:医師、疑い男性の滞在歴知らず 感染対策不徹底』 — 毎日新聞, 2014年11月8日
- ↑ 『都内在住の男性がエボラ熱感染の疑い 8日早朝には結果判明へ』 — フジテレビジョン, 2014年11月8日
- ↑ 19.0 19.1 19.2 『関西空港到着のギニア国籍女性 発熱で検査』 — 日本放送協会, 2014年11月8日
- ↑ 20.0 20.1 20.2 20.3 20.4 桐野耕一、金秀蓮 『エボラ熱:感染疑い2人 簡易診断では咽頭炎とマラリア』 — 毎日新聞, 2014年11月8日
- ↑ 21.0 21.1 『【エボラ出血熱】ギニア人女性の血液、国立感染症研究所に到着 昼すぎに結果判明の見通し』 — 産経新聞, 2014年11月8日
- ↑ 『エボラ出血熱への感染があり得る患者の発生について』 — 厚生労働省, 2014年11月8日
- ↑ 23.0 23.1 『エボラ出血熱への感染があり得るとされた患者の退院について』 — 厚生労働省, 2014年11月10日