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ジミー・ウェールズ、2006年のウィキメディアを展望

出典:『ウィキニュース』(ベータ版)


この記事は、ウィキメディア財団もしくはそのプロジェクトについて扱っています。

ウィキニュースも財団のプロジェクトのひとつであることにご注意ください。

【2005年12月18日】

独占インタビュー
独占インタビュー

ヴァンパイアにインタビューをするのに比べればそれほどでもないが、ウィキメディア財団ジミー・ウェールズに直接インタビューをするのは、以前よりも困難で事前の準備を要するものになってきている。ウィキニュースの、4人のそれぞれ異なる言語版(英語版スウェーデン語版オランダ語版ポーランド語版)の参加者が、12月5日の定例会見とケーブルテレビのニュース番組からの取材の前に、ウィキニュースのIRCチャンネルで「ジンボ」にインタビューをする手はずを整えた。

ウィキニュース

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フランスにて、ウェールズ氏

ウィキニュースを主な話題の一つにすることもありインタビューはウィキニュースのIRCチャンネル(英語版)にて公開で行われた。

ウィキニュースは、2004年12月の最初の週に英語版とドイツ語版が誕生して、ほぼ1年が経過した。それ以来プロジェクトは、最近加わったヘブライ語、ロシア語、日本語を含めた16の言語において、1万3,000以上の項目を公開している。

このプロジェクトへの批判者がいなかったことはなく、それらの批判のうちもっとも一般的なもののいくつかが、ウェールズ氏への質疑に反映された。

ウィキニュース: ウィキニュースは主要報道機関の公表済みのニュースを伝えなおすことに始終しているように思えます。これはウィキニュースの未来像だったのでしょうか?
ジミー・ウェールズ: 私は「伝えなおす」という言葉を使いません。否定的な印象を持っていますから。それよりも「統合」という言葉を使います。これはより精妙でより重要な手順です。もちろんもっとそれ以外のことも同時にたくさん行いたいとは思いますが、「統合」は常にウィキニュースの未来像の重要な一部をなしてきました。
ウィキの活動は各自の身の回りの専門分野に焦点を当ててきたように思います。人々は自分自身が興味がありまた精通することについて活動しています。なぜウィキニュースでは身の回りのニュースが少ないのでしょう。もっとも書きやすいことのように思われるのですが。
ウィキでの編集は身の回りの知識でうまくいくのですが、「身の回りの」というのは認識論的意味であり地理的意味ではありません。たとえば、私は個人的に興味を持つ世界のニュースについて、自分が住んでいる町の政治家についてよりも多くのことを知っていますしうまく統合することもできるでしょう。
ウィキニュース、あるいは他の各ウィキプロジェクトが、能力主義であると信じていますか?
そうだと思いますよ。(^_^) ウィキのやりかたは本質的に平等主義や無政府主義を好むのだと思われることもあるけれど、ウィキの編集ツールは社会構造に対して中立であるという感覚はたしかにあります。簡潔に言えば、結局質の高い作業をするユーザが、最終的に、いい仕事をしないユーザよりも力を持つことがわかります。その意味では、全くもって、能力主義なのですが、公的に能力主義なのではありません。
「進行中の出来事」はウィキペディアにとっては非・百科事典的過ぎます! 多くのウィキペディアのコンテンツがウィキブックスやウィキソースに移ったように「進行中の出来事」もウィキニュースに移すべきなのでしょうか?
これについては特にどうということは思っていません。百科事典で「進行中の出来事」を扱うやりかたはニュースの扱い方とはちがいます。並行的に作業を進め、ウィキペディアのホームページでよりもウィキニュースで大きく取り上げるべきなのではないかと思います。でもこれはコミュニティ内部で大変膨大な議論がありますから、私よりも他の人のほうが良くご存知でしょう。
ウィキメディア財団のすべてのプロジェクトはウィキペディアの為にデザインされたフリーソフトウェアのメディアウィキを使っていますよね。オンラインのコミュニティで開発していく百科事典にはすぐれたツールなのですが、ほかの知識の集積、たとえばウィキソースやウィキニュースにとってはそれほどまで優秀なものとは言えないでしょう。ウィキニュースにとっては、最新の記事が公開されたときにそのリストを自動的にメインページに掲載するために、動的なページのリストを作るツールをソフトウェアに追加することが不可欠でした。
ウィキニュースが1年前に始まったとき、新しい機能への要望がすぐ出てきました。動的なページ・リストはウィキニュースにとって大変重大で、他にもいくつかのツールを作って欲しいという要望があります。他のプロジェクト(ウィクショナリなど)でも似たような状況です。新しいプロジェクトを始める前にそのプロジェクトのためのソフトウェア・パッケージの開発が必要なのではありませんか。
新しいプロジェクトで必要なソフトウェアをもっと予測できたと思います。しかし、容易に予測できない要望も多いと理解しなければいけません。ときには問題の所在を良くわからないままに問題に対処せねばならないことだってあるのです。
AP通信は記事の著作権表示に「この記事を書き換えてはならない」という一文を加えました。ウィキニュースは、他の報道機関がその情報を配信するやりかたに影響を与えているのでしょうか。
主要報道機関はウィキニュースだけではなく市民によるジャーナリズム運動へ多大な関心を見せているように思われます。実業における多くの思慮深い人々が、社会現象の大変化が起こっているのだということを理解しています。彼らはこれまでの方法のもっともよい部分を活用しながら、共同体活動にどのように市民権を与えていくかという問題を解決することに、関心を寄せています。
「これまでの方法のもっともよい部分」というのをもう少し詳しく教えてくださいませんか。
そうですね、「これまでの方法のもっともよい部分」というのを説明すると……、よく言われるのは、伝統的な出版においては、定評ある仕組みを持っていることでしょうか。仕組みはしばしば壊れるけれども、たいていはうまく働きます。市民によるジャーナリズムは同じような定評ある仕組みを構築する道を探さなければなりません。ブログはある程度それを見つけていると思います。
ウィキニュースのユーザが取材で使う信任状を得ることについてなにか意見はありますか。
それはいい話だけれども、人々の間から出ている懸念を気にかけています。今月、信任状が実際にどのように機能しているのか、またユーザがどのように感じているかを知るため、より深く勉強しようと計画を立てているのです。
それについてのレポートが来ましたか? ユーザーが実際に経験したことについての?
ありません。

ウィキメディア財団のファンド・ドライブ

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ウィキメディア財団は、定常の運営資金に加えて、いままさに級数的に増加するウィキペディアの人気と同じ割合で増加しているように思われる資本支出を、その支持者に負担させようとしている。2003年12月から翌年1月までの最初の募金キャンペーン(サーバの大事故のあとにあったもので、3万米ドルが集まった)から2005年秋四半期の募金キャンペーン(24万4,000米ドル集まる)まで、毎回増加する目標額の資金は、いつも極めて短期間で集まった。

フロランス・ニバル=ドゥヴアール(ウィキメディア財団理事)は「ふた四半期分を調達したい」と述べた。

2006年の最初の四半期の仮予算は40万米ドルを超える金額を計上している。また計画では来年の全体の支出は320万米ドルに達する見込みである。しかし財団は2四半期分の予算を集めるという大まかな目標以上に今回の募金キャンペーンの詳細な資金目標を設定しなかった。

今回のファンド・ドライブは目標金額がありませんね。100万米ドルに始まってそれからさらに目標があがっていく、未発表の予算案があるとの噂があります。このドライブでウィキメディア財団はいくら寄付を集める必要があるのでしょう。
[ウェールズ] 変な噂ですね。噂ですか? とまれ、ウェブサイトを機能させ続けるために来年必要となる最低額の予算は、100万から200万米ドルですが、これはどのくらいの期間で、またどのくらい早くトラフィックが伸び続けるのかによります。伝統的に、新しいサーバを購入し、システムに組み込むのを待たされているときは、ウェブサイトのレスポンスが低下するために、トラフィックの成長が妨げられています。
我々に定められた目標は自由なライセンスの高品質な百科事典を、地球上のすべての人にそれぞれの言語で作成し配布することです。
我々はある分野ではこの目標が非常にうまく達せられていて、それ以外の分野ではそうでもないことを知っています。
この基金が可能とすることができるだろう、いくつかの方法を実験するべきであるというのが私の意志です。例えば、プロジェクトに取り組むネイティブスピーカーを募集するため、いくつかの小さい言語のためのコーディネータを雇うことが考えられます。
100万から200万米ドルというのは、過去の予算から大きく飛躍しています。この予算の増加は募金キャンペーンのモデルのままで、持続可能なものですか?
[ウェールズ]それは未解決の問題ですが、私はそのように考えています。ニーズの増大はトラフィックの増大を伴いますが、トラフィックの増大は私たちの援助の呼びかけに応えてくれる人を増やすことにつながります。うまくいけば、それらの2つのものが、一緒にまたうまく合理的に比例するのです。
ウォード・カニンガムがウィキマニアで分散型のウィキのモデルの議論をしていましたね。この議論は更に追求されたのでしょうか?
[ウェールズ] 分散型モデルについて行われてきた技術的な一切の重大な問題をよく知らないのですが、個人的にはそのようなモデルが実際の我々の需要に対応できたかどうか懐疑的なんです。否定はしませんけれどもね ^^
目標額を設定しない募金キャンペーンは明確な目標をもつものより、集まる資金が多くなるとお考えになりますか、それとも少なくなるとお考えですか。そして、それはなぜですか?
[ウェールズ] 私は目標額がないほうが2つの理由からより多くの資金が集まると考えています。
第一に、私が思うには、人々はしばしば資金の集まる速さや集まり具合に注目し、目標に到達しそうなのを見て寄付をやめます。
第二に、他の大きなチャリティーの一般的なやりかたに従ったのです。目標額を決めないファンド・ドライブもよくあります。私は彼らがもっともな理由があってそうするのだと考えます。いずれにせよ、やってみて結果をみてからでいいのではないでしょうか。
でも目標がないならば、「ドライブ」と呼ぶ理由はどうなるのでしょう。
[ウェールズ] よく、ウィキペディアンとして考えるのですが、自分自身の考えをその聴衆に投影しているのです。我々は予算を綿密に見て、ゴールと達成の可能性について考えている種類の人間です。予算を綿密に見ることは私たちにとってはすばらしいことです。しかし、多くの人々は我々を信じてくれていて、私たちの描く大きな未来像によく応じようとしてくれます。彼らには1円1円がどこに行くかという膨大な明細を知ろうなどという気はありません。もちろん我々はいつでもそれをお知らせする準備ができてはいますが。彼らはその代わりに、私たちのプロジェクトの感覚的な美しさが訴えることに応えてくれます。
募金キャンペーンはずいぶん控えめで、かろうじて認識できるほどです。集まった資金がそんなに未来のプロジェクトに重要であるのならば、どうして財団はメインページやそれぞれの項目のページに表示するなどしてそれを前面に押し出さないのでしょうか。
[ウェールズ] 実際にファンド・ドライブをやっている間はおっしゃるようにしています。しかし、私たちはいかんせんどうしようもなく趣味がよくて、そんなにひどくそれをぎらつかせたりなんかしていいのかと思うのですよ ^^
現在の募金キャンペーンは人力で更新されていて、インターネット上にのみ場所を構えている、といったぐあいで、ほとんどアメリカ合衆国の高校の卒業記念のパーティーでの募金キャンペーンのようですね。フィードバックをキャンペーンに統合する開発を考えていませんか。例えば、資金の集まり具合で自動的にグラフを作成し、国や通貨を超えて寄付を見られるなどというのは。
[ウェールズ] そう、たしかにもっと賢いシステムを使ったほうがいい。私の意見ですが、そのようなシステムにお金を払って開発してもらってもいいですね。ボランティアの開発者にとっては、プログラム上の課題が知的で困難であるほど面白いのですから。したがって、なぜ資金集めが必要なのかといえば、将来の資金集めをより効果的にするためという部分もあるわけです。
あなたはこの運動の有名人であられる。そしてその知名度はウィキペディアのプロジェクトの上昇に附随したものです。あなたはその知名度をあなたがお会いになった有名人に寄付をするよう勧められるのにお使いになるつもりですか。
[ウェールズ] そうですね。今では一日中寄付を募っていますよ ^^
多くの伝統的な義捐事業は募金キャンペーンに集まった資金の大部分を費やしていますね。集めようとしているのに比較してこの募金キャンペーンにかかる費用をどれだけ予定していますか。こんなことを伺うのは、ある募金キャンペーンでは、募金キャンペーンのために80%以上も費やしてしまっているようだからなのです。
[ウェールズ] 確かな数字は Mav(財団CFO)や マイケル(財政責任者)に聞いたり、過去の募金に係る出版物を見たりするなどしてください。ただ、資金調達はほぼ財団のウェブサイトでのみ行われているのは明らか(費用は0です)ですから、効率は大変良い。正確な数字はわかりませんけれど、要される費用は銀行とペイパルの手数料にほぼ限定されるでしょう。
効率の悪い寄付集めは大変不思議なものです。資金調達に掛かる費用は合理的なだけ低くあるべきです。
シーゲンソーラー氏の項目を巡る論争はウィキメディアコミュニティの外で忿怒を高めました。いったい、この件がファンド・ドライブ中の協力や個人的な寄付にどのような影響を与えると思いますか。
[ウェールズ] 関係ないのではないでしょうか。それはひとつのニュースに過ぎません。ニュースというものはいつでもあるものです。なにかあったとしても、人々がわれわれのことをより深く知ったということだけで寄付が増えると確信しています。
この募金キャンペーンでの寄付金をどのようにお使いになるのでしょう。ウィキペディアの信頼性を高めるために集まった資金を使うご予定は? 例えば事実確認係を雇うとかして。
[ウェールズ] 資金の主要部分は、いつもどおり、ハードウェアの購入資金に充てられます。いくらかはソフトウェアの改良に充てられ、これは信頼性を高めるのに繋がるものです。事実確認係を雇うことは考慮に入れられておりません。
募金キャンペーンはウィキメディア財団の唯一の財源ではありません。ほかの収入源、交付金や契約金などを今どれ程財団は得ているんでしょうか。またそれはどのような用途で使われているのでしょうか。
[ウェールズ] リアルタイムデータ配信サービスの費用をまかなってくださるパートナーからの少ないながらも増加している収入があります。我々のコンテンツを商業的に再利用する方々にとって、最新の結果を得るのによりよいやり方なのです。また数件の交付がありました。いくつかのものは今も使われています。
ダニー・ウール (Danny Wool) は最近財団に入りまして、事務所での私の秘書となっています。ただ、ほとんどの時間は交付金申請の事務をしていますね。代わりになる秘書を養成したら交付金申請を専門にやってもらう計画です。
どんな企業がリアルタイムデータ配信の費用をまかなっているのでしょうか。
[ウェールズ] Answers.com などです。
ダニー・ウールのように、何人かの人を雇い入れることを仰っていますね。雇用時間の増加による予算の増加に対するご予定は。
[ウェールズ] 来年は少なくとも5-10人は雇うこととなるんではないかと思います。もちろん寄付金がいくら寄せられるかによりますが、もっと大人数が必要になるのではないでしょうか。
今の時点で確実にいえることは、財団の仕事は大変多いということです。

引き続いて質問

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インタビューが進み参加者が増えるにつれて、質疑応答は、我々が本当に深く掘り下げたいポイントに到達するという局面に入ったが、時間が限られていた。それでインタビューはインタビューワが素早く質問を繰り出しウェールズ氏が素早く、簡潔に答えられる限り多く答えるという伝統的な記者会見に変わった。我々の皆が彼にもっと時間があって詳細や説明を聞けたらよいと願ってはいたが。

最近、英語版ウィキペディアにおいて匿名ユーザが新規ページを作成できなくなりましたね。ウィキメディア財団は徐々にではあってもウィキのもともとの精神から離れようとしているのですか?
[ウェールズ] 私たちがここかしこにほどこしたモデルの微調整がウィキの精神から離れるものなのか沿うものかなど気にはしません。
中華人民共和国政府はウィキペディアをブロックしています。そして最近 Onet.pl は自身の検索エンジンからウィキペディアを除外しました。このアクセス性についての変化はファンド・ドライブに悪影響を与えるでしょうか。
[ウェールズ] 以前から、大陸から私たちへの寄付は大してありませんでしたし、そのポーランドの検索エンジン (Onet.pl) の例がポーランド語版ウィキペディアのトラフィックに悪影響を与えるか疑わしいものです(もっと多くの検索エンジンがそうすれば悪影響は出るでしょうがね!)。
シーゲンソーラー氏の件も、いましがた起ったグラハム氏の件も、匿名ユーザが投稿したものです。一つ目は重要人物の中傷キャンペーン、二つ目は報道発表の著作権侵害でした。前者が問題なのは明らかですが、後者もウィキペディアを宣伝サイトにする道を開くものではありませんか?
ウィキペディアを宣伝目的で使う人々のことが大きな問題になったことはありません。少数のユーザがあちこちでそうしているというのは知っていますが。本当に事件だと思うようなことにはなったことがありません。
私は主にスウェーデン語版のプロジェクトに参加しています。あなたはスウェーデン語がおできにならない、ですから、あなたが非英語版のプロジェクトをご覧になったことがあるのか疑っているんです。そもそも私たちの存在をご存知ですか?
[ウェールズ] (^_^)
私はドイツ語を勉強していて、それでドイツ語版ウィキペディアを読もうとしています。そして、もちろん何が書いてあるかはわからないのだけれども、他の言語版も当然見ます。
他の言語版を見てみようとするのは、できる限り多くの人々と話し、出会い、統計のページでその言語版がどんな具合か見るためです。

この記事は英語版ウィキニュースからの翻訳です。

出典

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独自の取材
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