ハロルド・ピンター氏、ノーベル文学賞を贈られることが決定

出典:『ウィキニュース』(ベータ版)

【2005年10月14日】

イギリスの劇作家、映画脚本家ハロルド・ピンター氏(75)が2005年のノーベル文学賞を贈られることが決まった。13日現地時間昼(日本時間夜)、スウェーデンアカデミーが発表した。

ピンター氏が一連の作品で、「日常のむだ話の下に隠された危機を明るみに出し、人間の抑圧の数々の閉じた部屋のなかに押し入っている」ことが評価された。

ピンター氏は戦後イギリス演劇界を代表する作家の一人とみなされている。その作風は不条理演劇の系譜に属すが、イギリス演劇の伝統であるウェルメイドプレイの作劇法をも継承している。少数の登場人物が淡々と会話するうちに、登場人物のおかれた危機的な状況と心理の亀裂が展開されていく。また登場人物の会話が途切れる沈黙の多用にも特徴がある。ピンター戯曲の独特な雰囲気を形容する言葉として、イギリス演劇界では「ピンタレスク」という言葉が使われる。

スウェーデン・アカデミーの資料によれば、ピンター氏は1930年ロンドン生まれ。王立演劇アカデミーに学び、1950年から作家活動を開始。1957年に『部屋』で戯曲家としてデビューした。『バースディ・パーティ』(1957年)は初演では不人気だったが、現在ではしばしば上演される人気作品となっている。『管理人』(1959年)で注目され、『帰郷』(1964年)など一連の作品で戯曲家としての地位を確立した。初期の心理学的リアリズムに重心を置いた作風から、1967年以降、より抒情詩的な作風に転じ、『風景』(1967年)、『沈黙』(1968年)などを発表。この時期の『だれもいない国』(1975年)は代表作のひとつ。1980年代から政治的なテーマを取り上げるようになり、Mountain Language(1988年)、The New World Order(1991年)などの作品を発表している。

1973年から人権活動家としても活躍しており、イラク戦争でも反対の立場を明らかにしている。

また映画脚本も多数執筆しており、『フランス軍中尉の女』などが知られる。

邦訳は1977年に新潮社から『ハロルド・ピンター全集』(全三巻)などがある。

授賞式は12月11日ストックホルムで行われる。またピンター氏には賞金1千万クローナ(日本円で1億5千万円弱に相当)が贈られる。

出典[編集]