米国・カナダ産牛肉、輸入再開決定
【2005年12月12日】
毎日新聞など報道各社によると、日本政府は、牛海綿状脳症 (BSE) の発生以後、輸入を禁止しているアメリカ合衆国・カナダ産牛肉について、輸入禁止措置の解除を正式決定した。2003年12月に輸入が禁止されてから、約2年ぶりの輸入再開となる。年内にも輸入が再開され、2006年の年明け早々に一般に出回る模様。
日本経済新聞によると、今回の輸入再開の対象は、生後20カ月以下の牛で、脳や脊髄などの危険部位を除去した牛の肉で、輸出元政府が輸出証明を発行したものに限定される。
米国産牛肉については、仙台の「牛タン」や、大手牛丼チェーンで牛丼の原材料として大量に使われていた。毎日新聞によると、かつて仙台市内に100店以上あった牛タン専門店も、輸入禁止の煽りを受けて現在では半分以下に減っているという。また、当時の朝日新聞によれば輸入禁止後の2004年2月に牛肉の在庫が尽き、大手牛丼チェーンから牛丼が消える事態となった。後に他国産の牛肉を使って牛丼を提供するチェーンも現れたが、当時最大手であった吉野家ディー・アンド・シーでは牛丼の販売が現在も中止されたままとなっている。
産経新聞や東京新聞によると、今回の輸入再開について、牛丼の販売を中止している吉野家では、輸入が再開されてから2カ月程度で牛丼販売の再開を表明している。しかし、当初は確保できる量が限られるため、期間や時間限定で販売を再開するとのことである。一方で、オーストラリア産牛肉(オージー・ビーフ)を使用した牛丼(「新・牛丼」と称する)を販売する「すき家」を経営するゼンショーでは、安全性が確保できないとして、輸入再開後も使用を当面見送る。産経新聞によると松屋フーズでは検討するという。またスポーツニッポンによれば、神戸らんぷ亭は、当面は米国産に切り替えないとしているが、肉の安全性については肯定的に捉えている。東京新聞によると、大手スーパーチェーンでは取り扱いの再開には慎重な社が目立っている。
一方、東京新聞の報道では、今回の輸入再開の対象が生後20カ月以下の牛に限られていることから、米国が月齢制限を国際獣疫事務局(OIE)の基準である30カ月以下に緩和する要請を続ける方針といわれ、場合によっては政治問題化する可能性もある。
出典
[編集]- 位川一郎 『米国産牛肉:2年ぶり輸入禁止を解除 年内にも第1号−−農水省と厚労省』 — 毎日新聞, 2005年12月12日
- 共同通信 『政府が輸入再開決定 2年ぶり、米国産牛肉』 — Yahoo!ニュース, 2005年12月12日
- YOMIURI ONLINE 『米産牛肉、輸入再開を正式決定…年内にも店頭に』 — 読売新聞, 2005年12月12日
- 共同通信 『北米産牛肉、政府が輸入再開決定 年内にも国内へ』 — 産経新聞, 2005年12月12日
- NIKKEI NET 『政府、米国産牛肉の輸入再開決定・年内にも第1便』 — 日本経済新聞, 2005年12月12日
- asahi.com 『米国、カナダ産牛肉の輸入再開正式決定 03年以来』 — 朝日新聞, 2005年12月12日
- 『米国及びカナダから日本向けに輸出される牛肉等の輸入停止措置の解除について』 — 農林水産省, 2005年12月12日
- 共同通信 『米国産牛肉、当面使用せず 牛丼チェーンのすき家』 — 産経新聞, 2005年11月18日
- 共同通信 『「使いたいが使えない」 牛丼のすき家が見解発表』 — Yahoo!ニュース, 2005年12月12日
- Chunichi Web press 『米国産牛肉解禁 月齢制限残る火種』 — 東京新聞, 2005年12月13日
- 株式会社ゼンショー・ニュースリリース(PDFファイル) 『米国産牛肉輸入再開についての当社の見解』 — ゼンショー, 2005年12月13日
- Sankei Web 『吉野家の牛丼、限定再開へ スーパー慎重姿勢崩さず』 — 産経新聞, 2005年12月12日
- スポニチ ANNEX 『米牛肉輸入再開 吉牛の復活は?』 — スポーツニッポン, 2005年12月13日
- 『BSE:米国産牛肉輸入再開へ 再開されても…募る牛タン店の危機感 /宮城』 — 毎日新聞社, 2005年10月27日
- asahi.com 『牛丼が消える 下:代役丼 頼りは豚、開発大慌て』 — 朝日新聞, 2004年2月3日
- asahi.com 『牛丼が消える 上:100万食の消費大国「食べ納め」迫る』 — 朝日新聞, 2004年1月31日
- 『牛タンも、モ~食べられない、在庫あと1カ月分7割が米国産、“本場”仙台も大ピンチ』 — 夕刊フジ, 2004年1月10日