札幌市議会、住民投票実施の請願を否決 札幌オリンピック招致住民投票
【2022年12月17日】
2030年に行われる冬季オリンピック・パラリンピック大会の招致活動を巡り、その賛否を問う住民投票の実施を求める請願が12月13日の市議会本会議で不採択にされた[1]。投票結果は賛成11、反対55[2]。与党3会派(自民党・民主市民連合・公明党)が反対した(3会派のうち、民主市民連合は旧民主党系の会派[3])。請願は12月12日の招致調査特別委員会(定数22)でも不採択になっていた[4]。同委員会のうち、札幌市議会与党の自民党・民主市民連合・公明党の3会派が反対した[4]。自民・民主市民連合・公明の3会派は秋元克広札幌市長の支持母体なだけでなく、市議会の絶対多数(定数68名のうち52人)を握っている[5]。
住民投票の実施を求める請願は、北海道大学の神原勝名誉教授(自治体学)などの大学教授や弁護士ら10人が今年の11月に提出していた[6]。今回の請願では、来年4月9日投開票の札幌市長選・市議会議員選と同時に住民投票を実施するよう求めていた[6]。
札幌市には2007年に施行された市自治体基本条例があり、この中で住民の権利や行政の役割を定めている[7]。今回の請願はこの条例に基づいて行われた[4]。請願の代表者である神原名誉教授はこの基本条例の生みの親だが、請願は委員会での初審査で直ちに不採択が結論され、請願の内容に関して実質的な議論は行われなかった[4]。
2022年6月には共産党と市民ネットワーク北海道が住民投票条例案を議員提案しているが、今回と同様に与党3会派が同案を否決しており、今のところ住民投票実施の見込みはない[6]。
冬季オリンピック・パラリンピック招致調査特別委員会の委員は以下のとおり[8]。
委員長 | 村上 ゆうこ(民主市民連合、中央区) |
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副委員長 | 佐藤 綾(日本共産党、白石区) |
委員 | 三上 洋右(自由民主党、豊平区) |
鈴木 健雄(自由民主党、東区) | |
こじま ゆみ(自由民主党、厚別区) | |
飯島 弘之(自由民主党、西区) | |
北村 光一郎(自由民主党、清田区) | |
村松 叶啓(自由民主党、北区) | |
三神 英彦(自由民主党、南区) | |
小田 昌博(自由民主党、東区) | |
ふじわら 広昭(民主市民連合、東区) | |
桑原 透(民主市民連合、清田区) | |
岩崎 道郎(民主市民連合、南区) | |
うるしはら 直子(民主市民連合、白石区) | |
恩村 健太郎(民主市民連合、清田区) | |
丸山 秀樹(公明党、厚別区) | |
好井 七海(公明党、豊平区) | |
竹内 孝代(公明党、清田区) | |
池田 由美(日本共産党、豊平区) | |
田中 啓介(日本共産党、西区) | |
長屋 いずみ(日本共産党、北区) | |
山口 かずさ(山口 かずさ、白石区) |
同委員会は、委員長と欠席した2人を除き、反対15、賛成4の反対対数で請願を否決している[4]。与党3会派は否決の理由として「今やらなければならないのは住民投票ではなく、クリーンな大会運営について検討し、市民理解を広げ、信頼を回復する取り組みだ」などと述べており、最初から招致を前提としている[4]。
「市議会は3月にまちづくりに活力を与えるオリパラ招致の決議をしており、これに責任を持つべき」(自民)、「住民投票は18歳以上の市民に賛成か反対かの2択を迫るもの。道内の他都市や将来を担う若者らの意見が反映されない」(立憲)、「オリパラは子どもたちが成長し、躍動する機会となる。いま必要なのはオリパラを市民の新たな誇りとするための取り組みだ」(公明)というのが不採択派の主張である[3]。 一方、請願の採択を主張した共産党と市民ネットワーク北海道は、「招致の賛成派も反対派も、確信を持って意思表示できる場として実施すべき」(共産)、「住民投票で多くの賛成が得られれば、招致を支える基盤が札幌市にあることを国内外に表明できる」(市民ネット)などと述べた[3]。
不採択の背景には、2022年3月に市議会が招致推進決議を出したことや、6月に提出された住民投票条例案を市議会が否決したことがあるとみられる[7]。また、経済界の後押しを受けた自民党が強く不採択を主張したことも原因だった[7]。
秋元克広札幌市長は2030年の冬季オリンピック招致活動を積極的に推進しているが、招致に反対する市民も多く住民投票を実施するよう求める声もある。今年3月に郵送によって実施された市民調査では賛成派は約52%しかない[9]。海外では、デンバー、ハンブルク、ミュンヘン、ダボス、シオン、カルガリー、クラクフなどでオリンピック招致の住民投票が行われており、住民投票によって招致活動の賛否を問うことは世界的な潮流になっている[10]。今回の請願不採択に対して、請願の代表の神原名誉教授は「市も市議会も反対する市民が多いと想定しているから踏み込めないんだろう」「地方自治における二元代表制は、市長と市議会の間での緊張関係が必要だ。いまの札幌市は緊張感がなくなり、翼賛的な体制に陥っている」と批判している[3]。
今回の請願以外にも12日には、市民団体「冬季オリパラ招致問題を考える市民の会」が、請願に賛同する個人の署名635筆、団体の署名32筆の細川正人札幌市議会議長に提出している[9]。IOCのジョン・コーツ副会長は「事前に住民投票を行い住民に了解を得たうえで立候補して欲しい」と発言している[9]。
情報源
[編集]- ↑ 野口洸「五輪住民投票 請願不採択 札幌市議会 与党3会派が反対」。『北海道新聞社』、2022年12月14日朝刊16版2面。
- ↑ 産経新聞 『住民投票求める請願否決 札幌、冬季五輪招致巡り』 — 産経新聞社, 2022年12月13日
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 朝日新聞デジタル 『オリパラ招致の住民投票請願を不採択 札幌市議会特別委』 — 朝日新聞社, 2022年12月12日
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 野口洸「住民投票請願を不採択 市議会特別委 与党3会派が反対」。『北海道新聞社』、2022年12月13日朝刊16版3面。
- ↑ 札幌市 『会派別名簿』 — 札幌市,
- ↑ 6.0 6.1 6.2 野口洸、久保耕平「札幌五輪招致住民投票 請願不採択へ」。『北海道新聞社』、2022年12月10日朝刊16版33面。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 北海道新聞「揺らぐ五輪の信頼 初審査で結論 機運醸成に影響懸念」。『北海道新聞社』、2022年12月13日朝刊16版3面。
- ↑ 札幌市 『札幌市議会 委員会別名簿』 — 札幌市,
- ↑ 9.0 9.1 9.2 朝日新聞「五輪住民投票 請願不採択 札幌市議会委 自民など3会派反対」。『朝日新聞社』、2022年12月13日朝刊13版28面。
- ↑ 朝日新聞「五輪住民投票 海外では常識 ジャーナリスト・今井一さん」。『朝日新聞社』、2022年12月13日13版28面。