エチオピア、ソマリアへ侵攻

出典:『ウィキニュース』(ベータ版)
ナビゲーションに移動 検索に移動
Wikipedia
ウィキペディアソマリア内戦に関する記事があります。
ソマリアの地図(資料)

【2006年12月28日】

28日ソマリアのオンライン紙『シャベル・メディア・ネットワーク』(ShMN)は、首都モガディッシュから同都市を実効支配していた「イスラム法廷」(UIC)が27日午後完全撤退し、市内では略奪が起きていると報道した。UICは24日に隣国エチオピアが侵攻して以来、守勢に立たされていた。

26日ロイターによると、エチオピアのメレス・ゼナウィ首相は同日のテレビ演説を行い、ソマリアで作戦中のエチオピア軍は勝利の途上にあり、数日中にモガディッシュを制圧する見込みであると語った。メレス首相はまた、この演説で、相手側の「イスラム法廷」(UIC)には26日現在で、これまでに1,000人以上の死者が出たと語った。

27日ShWNによれば、エチオピアとソマリア暫定政府軍は、同日、モガディッシュから90kmの距離にあり、戦略的要衝であるジャウハールを占拠した。

エチオピアは24日、ソマリア中南部を実効支配するイスラム原理主義勢力UICに対する戦争状態を宣言し、以後、軍事作戦を公然と行っている。ソマリアは内戦状態にあり、中部および南部はUICが実効支配していた。エチオピアは、ソマリア南部の地方都市バイドアに本拠をおく暫定政府を支持している。

日本経済新聞によると、エチオピアは25日、南部に位置するモガディッシュ国際空港および100km離れた軍事空港の計2空港へ爆撃を行った。

25日の日経=AP電によると、エチオピアのメレス・ゼナウィ首相は24日テレビ演説により、UICとの戦争状態に入ったと宣言した。メレス首相は、バイドアやソマリア北東部の自治政府プントランド周辺がUIC側に攻撃されているとし、「過激派や反エチオピア勢力からの攻撃を防ぎ、自国の主権を守るため戦争を始めざるをえなくなった」などと述べた。またこの日経=AP電によると、エチオピアは24日には空軍機や戦車などをソマリア領内に投入していた。

ソマリアでの動き[編集]

バイドアでの戦闘の詳細図
ソマリア半島の勢力図(12月23日時点)
ソマリア半島の勢力図(12月28日時点)

26日の日経によると、ソマリア暫定政府は国境の全面閉鎖を宣言し、エチオピア政府はこの閉鎖を破る違法な飛行への措置として、爆撃を正当化している。同日経記事は、暫定政府に実質的な支配力はなく、国境閉鎖の実情は不明であるとしている。26日付のアルジャジーラは、暫定政府は国際援助団体の反対にもかかわらず、国境を封鎖したと伝えている。

BBCによれば、ソマリア暫定政府と「イスラム法廷」(UIC)は、陸上で先週からすでに1週間にわたる戦闘を行っており、暫定政府軍がUIC軍を各地で圧迫している。アルジャジーラはソマリア暫定政府軍とエチオピア陸軍部隊が協同作戦を行っていると指摘している。11月2日のBBCは、国連の内部資料のAPへのリーク資料によるとして、ソマリアには以前から8,000人規模のエチオピア陸軍部隊が駐留していたと伝えている。26日のBBCによれば、赤十字は600人を超える民兵および民間人を収容している。26日7時9分(UTC)付けでアルジャジーラが伝えたAPの現地住民電話インタビューによれば、UICは本拠地ブル・ハカバから撤退し、首都モガディッシュ方面に移動している。

『シャベル・メディア・ネットワーク』(ShMN)は、26日、UICの現在の拠点であり、モガディッシュから140km離れた街レゴをエチオピアの爆撃機2機が空襲したと伝えた。レゴはブルハカバから40km離れており、撤退後のUIC軍の防衛拠点のひとつとなっていた。   

またShMNは、26日付けでUICのシェイク・シャリーフ・シェイク・アーメッド議長が25日にモガディッシュで記者会見を開き、戦闘が長期化する見通しを語ったと伝えた。議長は、アラブ首長国連邦で行われたエチオピアとの交渉およびその決裂についても語った。この交渉については、エチオピアのメレス首相も24日のテレビ演説で言及し、交渉決裂がソマリア侵攻を余儀なくさせたとしていた。またシェイク・シャリーフ議長は、ソマリア国内にアルカイダの構成員はいないと語った。アメリカは以前からUICがアルカイダと協力関係にあると非難していた。 

アルジャジーラは、UICのある司令官が匿名でAFP通信に「UIC軍はあらゆる前線で圧迫されており、将来の反攻のため、ブル・ハカバとディンスールを含むいくつかの地点から撤退した」と語ったと伝えた。26日のBBCもまた、UIC側の戦略的撤退という主張を伝え、またUIC側がこの戦闘が長期化する見方を示したとしている。

各国の動き[編集]

BBCによれば、アフリカ連合 (AU) は26日現地時間早朝、エチオピアにはUICからの脅威に対抗してソマリアに介入する権利があると語った。またAUは、ソマリアの情勢に「正しくかつ適切に反応できなかった」ことを認めた。

ShMNは、国連安保理が27日行った二回目の協議で合意に達せず、停戦を呼びかける声明の採択に失敗したと伝えた。15国の安保理理事国中、カタールが全外国軍隊の撤退を主張し、合意に達することが出来なかった。ShMNによれば、米アレッサンドロ・ウルフ国連大使は「エチオピアの撤退で事態が解決するとは単純すぎる考えだ」とコメントを述べた。

背景[編集]

ソマリア暫定政権は公式にAUおよび国際連合(国連)に支援されている。BBCによれば、しかし暫定政権の最大の後援者はエチオピアである。11月2日のBBCによれば、エチオピアのメレス・ザナウィ首相は「隣国にイスラム国家を作らせない」とたびたび発言している。またイエメンが暫定政権に武器援助を行っている。

一方、朝日新聞、BBCおよびケニアの英字紙『イースト・アフリカン』は、エチオピアと国境問題で対立関係(エチオピア・エリトリア国境紛争参照)にあるエリトリアが、UICを支援していると伝える。

『イースト・アフリカン』によれば、ブッシュ政権はUICとアルカイダを関連付けており、ソマリアのイスラム勢力に強く反対する外交政策を打ち出し、その一環として今月上旬、米ボルトン国連大使が安保理に働きかけ、ソマリア暫定政府への武器輸出を許可する決議を採択している。国際英字紙『ヘラルド・トリビューン』のサリム・ローン記者はエチオピアへアメリカが軍事指導援助を行っていることを指摘し、ソマリア暫定政権への欧米の支援と内戦の継続を、アメリカ合衆国のイスラム勢力に対する代理戦争と位置づけている。

『イースト・アフリカン』は12月14日付けの米シンクタンク・外交関係会議(Council of Foreign Relations)が発表した、米ジョージ・メイソン大T・ライアン教授のレポートを紹介している。同教授は、ソマリアでの内戦は、エチオピア・エリトリアの代理戦争であり、両国の国境問題の解決がこの内戦の解決に不可欠だとする見方を提示し、さらにはエチオピアの強硬な姿勢が、ソマリアおよびエリトリアとの関係だけでなく、オガデン地方などソマリア国境沿いの国内反対勢力への影響への懸念から来ているという見方を示している。ライアン教授は、UICはより多様な背景をもった組織であり、アルカイダ関係者も含むものの、それは一部分に過ぎないとも指摘している。

出典[編集]