日テレドラマ「明日ママ」全スポンサーがCM自粛 放送継続方針は変えず
【2014年1月28日】
MSN産経新聞ニュースの報道によると、日本テレビの連続ドラマ「明日(あした)、ママがいない」へ協賛していた提供スポンサー企業の8社全てが、1月29日放送予定の第3話でCM提供をすべて自粛することが1月27日に判明した[1]。
内容に対する問題提起
このドラマは児童養護施設を舞台としているが、1月16日に赤ちゃんポストを運営している熊本市の慈恵病院より、作品内容に関して「養護施設の子供や職員への誤解偏見を与え、人権侵害だ」として内容に問題があると判断され、放送の中止を求められていた[2]。慈恵病院が放送倫理番組向上機構(BPO)に対して、「施設の子供や職員の人権を侵害している」として審議の申し立てを行い[3]、慈恵病院はBPOの「放送人権委員会」へ審議を求める申立書を送付した[4]。産婦人科の蓮田健部長は1月22日の会見で、「第1回放送後に、施設の子供がいじめられたとの報告を伝え聞き、緊急性が高いと判断した。BPOは速やかに結論を出してほしい」と発言した[3][4]。さらに熊本市の幸山政史市長も同日の会見で、「過激な描写や演出、現実離れした表現が多く、児童養護施設への誤解を与えかねない内容だ。局は施設当事者の声を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と改善を要求していた[3][4]。
内容に関して改善を求める声が挙がってはいたものの、日本テレビは慈恵病院へ1月20日に放送を継続する旨を伝えていた[5]。日本テレビの総合広報部は「倫理問題を含め、総合的な観点で放送前に社内で議論した。最後まで放送を見てほしい」と返答しており、ドラマに対して大きな変更を加える意向は表さなかった[5]。
スポンサー企業の対応
ドラマは1月15日に第1回が放送されクレジット(テロップ表示)は協賛8社全て表示されていたが、22日に第2回が放送されると1社も表示されなくなる事態となった[6]。さらに、エバラ食品工業、JX日鉱日石エネルギー(ENEOS)[注 1]、キユーピーの3社はCMの放送そのものも自粛し、ACジャパン(公共広告)の宣伝に変更された[7]。なお、第2回の放送時において他のスポンサー5社はCMの放送を通常通り行っていた[7]。
CM提供を自粛した企業のうち、ENEOSの広報担当は「皆さまからの意見を聞き社内で協議した結果、クレジットとCMの提供は控えるのが相当と判断しました」としており[8]、またエバラ食品も「弊社は6年以上前から同時間帯の枠[注 2]を年間契約しております。そのため、事前にどのようなドラマになるか把握していませんでしたが、内容をかんがみて、今回は番組へのCM提供を控えることにしました」と説明していた[8]。
CMの提供自粛は第3回の放送を前に、更に広がる動きを見せた。毎日jpの1月25日付けの記事では[9]、日清食品と富士重工業の2社もCM提供の自粛を決定した[9]。ただ、花王と小林製薬は対応検討中[9]、三菱地所はCMを継続すると回答しており[9]、25日時点ではスポンサー毎のCM対応が自粛と継続に分かれていた[9]。
しかし、1月27日になると協賛8社全てがCM自粛に至る[10]。CM自粛に至った理由として小林製薬は、「顧客から番組提供の是非を考えるべきという意見が多く寄せられ、今夜(27日)同番組へのCM提供見合わせを判断した」としているほか[11]、花王も「CMを放送する環境にはないと判断した」としている[1]。ただしスポンサー契約そのものは継続する[1]。最終的にドラマへのスポンサー企業8社全てのCMが自粛され、ACジャパンの広告に差し替えられる極めて異例の事態となった[12]。
日本テレビの対応
今回ドラマを制作した日本テレビ側に対し、MSN産経新聞ニュースが取材したところによると、日本テレビの大久保好男社長は1月27日の定例記者会見で「"配慮が足りないのではないか"とする趣旨の申し出をいただき重く受け止めている」と数々の批判に耳を傾ける一方で[1]、「最後まで見てもらえれば、私たちの意図をご理解していただける」と視聴者へ訴え[1]、全9回の放送を継続する方針を表明した[1]。また佐野譲顕制作局長は「現在第4話を収録中で、台本も第5話まで完成している」としたうえで[13]、「最終回までストーリーが完成しており、脚本や演出の大幅な変更もない。子供の視点から愛情とは何かを描きたい」として、現状の制作路線をそのまま踏襲する意向を示した[13]。
脚注
情報源
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 MSN産経新聞ニュース 『全スポンサーがCM見合わせ 日テレドラマ「明日、ママがいない」 異例の事態に(1)』 — 産経新聞, 2014年1月27日
- ↑ nikkansports.com 『ドラマ「明日、ママがいない」に中止要請』 — 日刊スポーツ, 2014年1月16日
- ↑ 3.0 3.1 3.2 スポニチANNEX 『「明日ママ」影響懸念…慈恵病院、BPOに審議要求』 — スポーツニッポン, 2014年1月23日
- ↑ 4.0 4.1 4.2 東スポWeb 『愛菜ドラマ「スポンサー離れ」「CM大挙撤退」の異常事態(1)』 — 東京スポーツ, 2014年1月23日
- ↑ 5.0 5.1 MSN産経新聞ニュース 『芦田愛菜主演ドラマ 日テレが継続を表明「最後まで放送を見てほしい」』 — 産経新聞, 2014年1月21日
- ↑ スポニチANNEX 『「明日ママ」スポンサー自粛続々…CM取りやめ、差し替えも』 — スポーツニッポン, 2014年1月23日
- ↑ 7.0 7.1 MSN産経新聞ニュース 『スポンサー3社がCM見合わせ 日テレ系ドラマ「明日、ママがいない」』 — 産経新聞, 2014年1月23日
- ↑ 8.0 8.1 東スポWeb 『愛菜ドラマ「スポンサー離れ」「CM大挙撤退」の異常事態(2)』 — 東京スポーツ, 2014年1月23日
- ↑ 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 毎日jp(土屋渓、有田浩子) 『日本テレビ:「明日、ママがいない」3社がCM中止』 — 毎日新聞, 2014年1月25日
- ↑ 信毎web 『「明日、ママがいない」放送継続 CMは全社見合わせ』 — 信濃毎日新聞, 2014年1月27日
- ↑ 朝日新聞デジタル 『「明日ママ」全社がCM自粛 日テレ社長、放映は続行』 — 朝日新聞, 2014年1月27日
- ↑ スポニチANNEX 『「明日ママ」スポンサー全社がCM見合わせ』 — スポーツニッポン, 2014年1月27日
- ↑ 13.0 13.1 MSN産経新聞ニュース 『全スポンサーがCM見合わせ 日テレドラマ「明日、ママがいない」 異例の事態に(2)』 — 産経新聞, 2014年1月27日